説 教 エゼキエル書2章8〜3章3節 ヘブル書4章12〜13節「神の言葉を食せ」
２０１４・０６・２２（説教１４２５１５４２） 「食べる」ということは、私たちの生活の基本の一部分でありましょう。あるイギリスの思想家が「あ なたが何を食べているかを言ってみよ。そうすれば私は、あなたがどのような人間であるかを言い当て てみよう」と申しました。毎日食べているその食物が何であるかによって、その人の生活ばかりか、人 間そのものまでが決まると言うのです。旧約の預言者エゼキエルは主なる神によって、唯一の最も大切 な食物として「神の言葉を食せ」と命じられました。エゼキエル書の2章8節から3章3節までの6節 の間に「食べる」という言葉が6回も出てきます。エゼキエルは文字どおり「神の言葉の巻物」を「食 べた」のです。神の言葉を「食した」のです。そのようにして、エゼキエルは本当の預言者（神の言葉 によって生きる者）とされました。 私たちはどうでしょうか。私たちもまた「神の言葉を食せ」と神によって命じられています。それで は、神の言葉をエゼキエルのように「食した」（御言葉の巻物を食べた）私たちは、どのような生活をす るのでしょうか。そのことを今朝はご一緒に、御言葉を通して聴いて参りたいと思うのです。 現在ではほとんどの教会で新共同訳聖書を用いていますので、私たち葉山教会の日曜学校で用いる子 供用の聖書が無くなってしまいました。いま私たちの教会では大人の使う詩篇つきの新約聖書を日曜学 校生徒たちにも使わせています。しかし少し前までは、子供用の聖書の扉の部分に「日曜学校生徒の五 つのお約束」とあって、次のように書いてあったものです。「一、せいしょをよむ。二、おいのりをする。 三、日曜学校をやすまない。四、けんきんをする。五、おともだちをさそう」。 この5つの項目はそのまま、私たちの信仰生活（教会生活）にも当てはまるものです。大人の言葉に 変えるなら、このようになるでしょう。�� 聖書に親しむこと。�� 日々祈りを献げること。�� 礼拝を厳 守すること。�� 献金をもって主に仕えること。�� 福音の喜びを他者にも伝えること。以上の5項目の 務めです。さらに単純化して申しますなら「聖書」「祈り」「礼拝」「献金」「伝道」の5項目です。まこ とに基本的なことで「何をいまさら」と言われてしまいそうです。日曜学校の生徒たちでさえ守り務め ている当然のキリスト者の歩みです。しかしここに、神の言葉を食す者とされた私たちの、新しい生活 の喜びと幸いが言い表されているのではないでしょうか。 そこで、まず第一の「聖書に親しむこと」です。私たちは毎日、聖書を読んでいるでしょうか。それ はキリスト者の生活の基本中の基本です。聖書を読まないキリスト者の生活は、ガソリンを補給しない 自動車のようなもので、信仰が枯渇する生活になってしまいます。エンストをしてしまいます。霊の生 命が無くなってしまいます。そのような「霊的エンスト」に陥らないために、私たちは日々「聖書に親 しむ生活」へと招かれています。たとえ短くても良いのです。一日に10分でも良いのです。聖書をと にかく毎日「読む」（聖書に親しむ）習慣を私たちは身につけたいものです。そのような習慣を充分に持 っている人は、さらに充実させるように努めてまいりたいものです。 私たちの葉山教会では婦人会でエレミヤ書の講解をしています。それまではイザヤ書を10年ぐらい 学んで参りまして、いまエレミヤ書をやはり10年ぐらい学んでようやく49章まで至りました。このこ とを東海連合長老会の牧師会で話しましたら、みんなとても驚いていました。「どのようにエレミヤ書を 婦人会で語るのですか？」と訊かれました。私はむしろ意外な思いがしまして「いや、とにかくできる だけ丁寧に、そしてどの御言葉からもキリストが語られるように講解しているつもりです」と申しまし た。実際、このような学びを婦人会で続けて来ることができたのは、婦人会に出席する人たちの熱心に よるもので、私は主に感謝するほかありません。 ところでこの婦人会で、私がエレミヤ書以外の聖書の御言葉を引用するとき、私は敢えてページを申 さないことにしています。これは婦人会だけではなく、他の聖書の学びの時でもそうです。たとえば「旧 約聖書の何々ページ」ということを安易に言わないように心掛けています。それは、ページ数を言わな くてもすぐに開けるように「聖書に親しんでほしい」という願いからです（まあ、あまり開けない様子 でしたらページを申しますが）。どうか私たちは「旧約聖書（新約聖書）何々書何章何節」と言われたら、 すぐにその箇所を開けるように日々「聖書に親しむ」生活をしたいと思います。讃美歌187番の歌詞を 心に留めましょう。「主よいのちの ことばを 与えたまえ わが身に われは求む ひたすら 主よ りたもう みかてを。／ガリラヤにて みかてを わけたまいし わが主よ いまも活ける ことばを あたえたまえ ゆたかに」。 第二に、私たちに与えられている「神の言葉を食す」生活の幸いは「日々祈りを献げること」です。 「祈り」は私たちキリストに結ばれたる者たちの「霊の呼吸」です。誰でも呼吸をしなければ死んでし まいます。あるいは呼吸が乱れれば健康にすぐ影響が出てきます。それと同じように「祈り」という「霊 の呼吸」を失った生活は、生命を失った信仰生活に陥ってしまう危険があります。実は、現代のキリス ト者が最も軽んじている（失ってしまった）信仰の姿勢は「祈りの生活」かもしれません。昨年のクリ スマスに洗礼を受けた猪井兄弟（今日も出席していますが）は、求道中の時から毎週の祈祷会にも熱心 に出席しています。とても素晴らしいことだと思います。 と申しますのは、私自身のひとつの感謝の思い出があるからです。私は高校2年生の時に初めて教会 に通い始めました。祈祷会にもすぐに出席するようになりました。毎週水曜日の夜7時半からでした。 学校から（農学校でしたから時に農場から）まっすぐに教会に行って、祈祷会に出席するのが私の喜び でした（出席はたいてい先生ご夫妻と私の3人だけした）しかし自分では祈りをささげることはなかっ た。そのようなある日、私はどうしても祈らずにはおれなくなりました。それは不思議な経験でした。 聖霊が私に祈りの言葉を（祈る生活を）与えて下さった経験です。私はその日の祈祷会で生まれて初め て、拙い祈りを献げました。それを聴いて献げられた牧師先生の深い感謝の祈りを、私は忘れることは できません。 よく「私はみなさんのような立派な祈りができませんから」と言うかたがいます。もしそれを「祈 らない言い訳」にしているとしたら由々しき事態です。「祈り」において大切なことは、それが「立派な 祈りであるかどうか」ではありません。主イエスは会堂において、堂々と長々しい祈りを献げるパリサ イ人ではなく、涙を流して胸を打ちながら「神よ、罪人のわれを赦したまえ」と祈った取税人こそ「神 に義とされて（救われて）家に帰ったのだ」と言われました。私たちも同じです。なにより私たちには 「主の祈り」という祈りの手本が、主イエスから与えられているのです。ご自分の言葉ではよく祈れな い人であっても「主の祈り」を日々祈ることはできます。そして「主の祈り」にこそ、全ての祈りの生 活の喜びと幸いがあるのです。また旧約の詩篇によく親しまれることが大事です。詩篇こそ「日々祈り に親しむ生活」の教科書です。 三番目に与えられているキリスト者の幸いは「礼拝を厳守すること」です。礼拝厳守。古臭いでしょ うか？。いえ、まさに「温故知新」（温故知真）ではないでしょうか。かつてスイス改革派教会のエーミ ル・ブルンナー博士が来日され、ＩＣＵや東京神学大学などで約2年間教鞭を執られました。そこでブ ルンナー博士が言われたひとつに「日本のキリスト者の最も良い点は礼拝厳守の精神が教会の中に漲っ ていること」という言葉がありました。それから半世紀以上を過ぎて、いま私たちはこの「礼拝厳守」 の精神が「漲っている」どころか「弱まっている」のではないかと危惧しています。これは病気やその 他の理由で礼拝に出席したくても思うようにならない、と言うこととは違います。そういうことではな く、要するに「礼拝をさぼる」心（礼拝を軽んずる心）が「漲りつつある」のではないかという危惧な のです。どうか私たちは、信仰の諸先輩たちの姿を思い起こし、いま新たに「礼拝厳守」の生活に励ん で参りたいと思います。 四番目に与えられている幸いは「献金をもって主に仕えること」です。今年の東海連合長老会の主題 は「教会」ですが、それに対する副題として「教会を支える奉献」という言葉が与えられました。来た る7月にはこの副題に基づいて、私たちの教会で礼拝後に「サマーリトリート」（葉山教会夏の小修養 会）を開催する予定です。そこで「献金」について「それはデリケートな問題である」という意識があ ります。要するに「教会が金のことをとやかく言うな」という意識です。しかしそのように言う人に限 って献金が不熱心なのは不思議なことです。献金は私たちの神に対する「感謝の献げもの」です。デリ ケートどころか喜んで語るべき感謝の生活です。献金は生活費の中から「余ったら献げる」ものではあ りません。かつて私たちの先輩たちは、毎月の所得の中からまず献金を感謝と祈りをもって聖別したも のです。そして文字どおり「十分の一献金」を献げました。そのような献金の心を重んじる私たちであ りたいのです。 この間の全国連合長老会会議において「主の日の礼拝式文」が全会一致で可決されました。その議論 の中でひとつ問題になったのが「献金感謝の祈り」です。どうぞ改めて思い起こして下さい。誰が、誰 に向かって、何を感謝するのでしょうか？。答えは、私たちが、主なる神に向かって、献金を献げる者 とされたことを感謝するのです。だから「献金感謝の祈り」とは「献金をもって主にお仕えする者とさ れた恵みへの感謝」以外のなにものでもありません。それ以外の言葉は必要ないのです。私たちはみず からの存在と生活の全てを主の御用のためにお献げするのです。時と宝と智恵と力とを献げて主にお仕 えする私たちとされているのです。 最後に「神の言葉を食す」私たちに与えられた五番目の幸いは「福音の喜びを他者にも伝えること」 すなわち「伝道」です。神の言葉の巻物を食べたエゼキエルは、ただちに立って諸国民に御言葉を宣べ 伝える僕となりました。「伝道」の「道」の字はもともと中国語で「語る」という意味です。だから「伝 道」とは「神の言葉を語り伝える」という意味になります。この「神の言葉を語り伝える」ことこそ、 私たちの教会の最も大きな光栄ある務めではないでしょうか。全ての人にキリストによる唯一永遠の救 いと祝福を「語り伝える」ことが伝道です。そして大切なことは、私たちここに連なる者たち一人びと りが、その「伝道」のわざに共に仕える僕とされていることです。 それと同時に「伝道」は「まことの教会を建てる」ことです。神の言葉が正しく語り伝えられるとき、 その地には必ずキリストの身体なる「まことの教会」が建てられるからです。逆に申しますなら「まこ との教会」が建てられない「伝道」はありえないのです。伝道は必ず真の礼拝の群を形成するのです。 御言葉（キリストの御業）に対する応答に繋がるのです。伝道とはすなわち真の教会形成であり、真の 教会形成とはすなわち伝道のわざなのです。 終わりに、今朝のエゼキエル書3章2節をよく読みますと、神がエゼキエルに御言葉を「食べさせた」 とあります。エゼキエルは受けただけです。戴いただけです。その開かれた口に主なる神は御言葉を「食 べさせて」下さった。圧倒的な恵みの出来事です。だから3節の終わりには「わたしがそれを食べると、 それはわたしの口に甘いこと蜜のようであった」と記されています。この「甘い」とは魂の栄養そのも の。「人を生かす救いの言葉」という意味です。私たちは「神の言葉を食す」ことによって十字架の主イ エス・キリストに出会うのです。主がこの世界を救うためになして下さった全ての御業を知り、それを 信じ、その恵みに生かされるのです。どうかもろともに、その十字架の主の恵みに応える私たちの感謝 の生活を造って参りたい。ともに「聖書」「祈り」「礼拝」「献金」「伝道」に勤しみ励む者とされてゆき たく思います。「神の言葉を食す」幸いに生かされて参りたいと思います。