説     教     詩篇98篇1〜3節    ルカ福音書2章1〜14

「真実のサンタクロース」

 2013年 聖夜礼拝 2013・12・24(説教1351b1516)  クリスマスおめでとうございます。さて、日本でクリスマスと言えば、イエス・キリストより も、サンタクロースのほうが有名かもしれません。クリスマスとはもともとラテン語で「キリス トを礼拝する日」という意味ですが、世間ではどちらかと言うと「サンタクロースがプレゼント をくれる日」という感じになっています。ある絵本のタイトルに「サンタクロースって、ほんと うにいるの?」というのがありました。皆さんにお訊きしたいと思います。サンタクロースは、 本当にいるのでしょうか?。実在しない、架空の人物なのでしょうか?。  答えを先に申しますなら、サンタクロースは実在する人物です。正確には“実在した人物”で す。いまから約1600年前、西暦4世紀の小アジヤ(今日のトルコ西部)のミラという町の教会 にいた聖ニコラウスという人が、実はサンタクロースなのです。聖ニコラウスを英語ではセント ニコラウス、オランダ語ではシンタクラースと言います。セントニコラウス⇒⇒シンタクラース ⇒⇒サンタクラウス⇒⇒サンタクロースになったのです。本当ですよ。  さて、この聖ニコラウスは、世界最古の神学校・アレクサンドリア教理学校に学び、アタナシ ウスらと共に、全世界のキリスト教会共通の信仰告白であるニカイア信条の信仰に堅く立ち、ま ことのキリストの教会に仕えた立派な神学者でした。当時アリウスという神学者が「キリストは 神ではなく、神にいちばん近い人間に過ぎない」という間違った教えを語って人々を惑わせてい ました。このアリウスの異端に対して正面から戦い、正統信仰を貫いて人々をキリストに導いた 人が聖ニコラウスなのです。  西暦325年、第一回の世界教会会議(これを公会議と言います)がニカイアにおいて行われ たとき、ニコラウスはアリウスが得々と間違った教えを語るのに我慢ができず「神を畏れぬ者は 公会議において語るべからず」と叫んで、アリウスを壇上から引きずり降ろしたと伝えられてい ます。この事件でニコラウスは聖職位を剥奪されそうになりますが、その夜人々の夢に天使が現 れて、キリストと共に立つニコラウスの姿が示された。そのため今でも東方教会ではイコンにニ コラウスの姿を描くとき、必ず右側にキリストを描くならわしになっています。  ニコラウスはミラの街の人々をキリスト深く愛し、貧しい人、身寄りのない人、困っている人々 を助けました。あるとき、貧しさのため身売りされそうになった3人の姉妹を、その家の煙突か ら銀貨を投げこんで助けたことがありました。そのときニコラウスが投げた銀貨が偶然、暖炉の 縁に吊るされていた靴下の中に入ったため、サンタクロースはプレゼントを靴下の中に入れてく れるという伝説になったのです。またあるときには、ニコラウスは無実の罪で処刑されそうにな った3人の兵士たちのために、みずから剣の前に立ちはだかってその命を救いました。またある ときには、船から落ちて溺れている人を救うために、みずから荒れた海に飛びこんだこともあっ たそうです。そのほかにも、ニコラウスが行った良きわざは数えきれないほどでしたので、そこ から「子供たち、貧しい人々、身寄りのない人々のためにプレゼントをくれるニコラウス」とい うサンタクロースのイメージが定着したのです。サンタクロースは本当にいた人なのです。  さて、サンタクロースは必ず赤い服を着ています。どうしてでしょうか?。それは古代教会に おいて、教会の指導者が着る服の色が赤だったからです。それは殉教者の血の色を現わしていま す。殉教者とは、キリストの愛を証して生命を献げた人のことです。たとえ殺されても、自分を 殺す人々のために、赦しと祝福を祈って死んだのです。聖書にはそのような殉教者(キリストの 証人)たちの姿がたくさん描かれています。たとえばステパノという人は、人々から石打ちの刑 に処せられましたが、石で撃たれつつ全ての人を赦し祝福して、主のみもとに召されたのでした。 その殉教の様子を観て心砕かれた人の中に、のちに使徒パウロとなったパリサイ人サウロがいま した。  サンタクロースも、そうした殉教者の一人でした。つまりサンタクロースは、キリストの愛と 恵みを生命をささげて証した人です。キリストを指し示した人です。だからキリストの左側にサ ンタクロースが描かれるのです。もしサンタクロースがここにいたら、私たちにこう言うに違い ありません。「みなさん、私ではなく、ただキリストのみを見つめて下さい!それが本当のクリ スマス(キリスト礼拝)なのですから」と。クリスマスの主役はサンタクロースではなく、神の 御子イエス・キリストです。このキリストのご降誕の恵みを伝えるためには、たとえ自分の生命 を献げても惜しくはない、そのようにサンタクロースは思っていたのです。  キリストは私たちのために、そして全世界の救いと平和のために、ベツレヘムの馬小屋に生ま れて下さいました。まさに今日、歴史がBCとADに分かれたのです。BCとは“Before Christ =キリスト以前”という意味であり、ADとは“Anno Domini=われらの主の年”という意味 です。神の御子が私たちを救うために、世界でいちばん低く、貧しく、暗いところにお生まれ下 さったのです。どうか私たちもまた、サンタクロースと共に、この御降誕の主イエス・キリスト を生活の中心にお迎えしましょう。まことのクリスマスの恵みと祝福が、全ての人々と共にあり ますように。キリストは永遠の神の御子として、いつも、いつまでも、変わらず私たちと共にい て下さるのです。クリスマスおめでとうございます。まことに主は、あなたのためにお生まれに なりました。