説 教 イザヤ書40章27〜31節 ガラテヤ書6章11〜16節「新しく造られる」
ガラテヤ書講解（47） ２０１３・１１・０３（説教１３４４１５０８） 私たちキリスト者は、いつも揺るがない基盤の上に生活を立てているでしょうか。今朝の御言葉・ガラ テヤ書6章11節から16節をよく読みますと、ここに使徒パウロは、私たちが立つ基盤が確かなものでは ないことを指摘しています。何よりもそれは今朝のガラテヤ書6章12節「いったい、肉において見えを 飾ろうとする者たちは、キリスト・イエスの十字架のゆえに、迫害を受けたくないばかりに、あなたがた にしいて割礼を受けさせようとする」という御言葉に現されているのです。ここでパウロが言う「肉にお いて見えを飾る」生活と私たちは無縁でしょうか？。この「肉において」とは「キリストの恵みから離れ ている」という意味です。 パウロは語るのです。私たちに訊ねているのです。あなたの生活はいつも、十字架の主キリストの測り 知れない恵みの上に立てられているではないか。それにもかかわらず、あなたは十字架の主から離れ、虚 しい偽りの「主」に自分を委ねていることはないだろうか？。私たち人間は、本当の喜びからいとも簡単 に離れ、いつでも虚しい偽りの喜びに走ってしまう存在なのです。そのことを今朝のガラテヤ書6章12 節は「肉において見えを飾る」という言葉であらわしているのです。 それだからこそ、私たちにはいつも、見据えているべき喜びの音信（おとずれ）があります。それは今 朝の御言葉の15節に「割礼のあるなしは問題ではなく、ただ、新しく造られることこそ、重要なのであ る」と力強く宣言されていることです。「肉において見えを飾る」生活は、ガラテヤの人々にとって「割礼 を受ける」という眼に見える徴（しるし）を伴いました。自分が迫害を受けたくない（人間関係から疎外 されたくない）という恐れから「割礼」（肉による見栄）を求めたガラテヤの人たちの姿はそのまま、キリ ストを3度も裏切ったペテロの姿に繋がるのでます。そこでこそ大切なことは「割礼のあるなしは問題で はなく、ただ、新しく造られることこそ、重要なのである」と告げられている神の一方的な恵みの宣言で す。 ここに「新しく造られること」と明確に告げられていることは、私たちの罪を十字架において贖い取っ て下さった神の御子イエス・キリストが、いつも永遠に変わりたもうことなく、私たちと共におられる唯 一の「主」であられる、という事実に基いています。つまり、私たちが立っている（と思いこんでいる） 人生の基盤は実は不確かなものに過ぎないのであって、確かな唯一の基盤は、私たちを贖って下さり、ご 自分のものとして下さったキリストの恵みの確かさにあるのです。そういたしますと「新たに造られるこ と」ということは、この贖い主なるキリストのもとに、私たちが幾度でも「立ち帰ること」です。それだ けが本当に大切なことだと、パウロははっきりと私たちに告げているのです。 この事と関連して、私たちは、コロサイ書3章1節から10節までの御言葉を読みたいと思います。「こ のように、あなたがたはキリストと共によみがえらされたのだから、上にあるものを求めなさい。そこで はキリストが神の右に座しておられるのである。あなたがたは上にあるものを思うべきであって、地上の ものに心を引かれてはならない。あなたがたはすでに死んだものであって、あなたがたのいのちは、キリ ストと共に神のうちに隠されているのである。わたしたちのいのちなるキリストが現れる時には、あなた がたも、キリストと共に栄光のうちに現れるであろう。だから、地上の肢体、すなわち、不品行、汚れ、 情欲、悪欲、また貪欲を殺してしまいなさい。貪欲は偶像礼拝にほかならない。これらのことのために、 神の怒りが下るのである。あなたがたも、以前これらのうちに日を過ごしていた時には、これらのことを して歩いていた。しかし今は、これらいっさいのことを捨て、怒り、憤り、悪意、そしり、口から出る恥 ずべき言葉を、捨ててしまいなさい。互にうそを言ってはならない。あなたがたは、古き人をその行いと 一緒に脱ぎ捨て、造り主のかたちに従って新しくされ、真の知識に至る新しき人を着たのである」。 ここにはまことに明解に、私たちが拠って立つべきキリスト者の生活の揺るぎなき基盤が語られていま す。なによりもそれは、十字架と復活の主キリストの救いの恵みに教会によって堅く結ばれた者となり、 キリストの「かたち」に従って「新しくされ」ることです。そのとき私たちの生活に本当の揺るがぬ喜び と希望が与えられるのです。その喜びと幸いをパウロは、いまの御言葉の終わりに「真の知識に至る新し き人を着る」という言葉で現しています。この「新しき人」とはキリストのことです。キリストの義です。 「キリストを信ずる信仰に基く神からの義」です。その「キリストの義」（救いの恵み）に私たちは覆われ て、ここに日々の生活を生きる者とされている。「肉において見えを飾る」生活ではなく、いま喜んで主と 共に生きる「キリストの義の証人」とされているのです。 いま私たちの婦人会では毎回エレミヤ書の学びをしています。婦人会でエレミヤ書の学びというのは珍 しいようです。その前は約10年間イザヤ書を学んで参りました。イザヤとエレミヤは生きた時代に百年 以上の差がありますが、宣べ伝えている福音の真理はひとつです。それは両者ともに“十字架の主キリス トによる新しい生活”を宣べ伝えていることです。そのことは今朝あわせて拝読したイザヤ書40章27節 以下にもはっきりとあらわされています。「ヤコブよ、何ゆえあなたは、『わが道は主に隠れている』と言 うか。イスラエルよ、何ゆえあなたは、『わが訴えは神に顧みられない』と言うか。あなたは知らなかった か、あなたは聞かなかったか。主はとこしえの神、地の果ての創造者であって、弱ることなく、また疲れ ることなく、その知恵ははかりがたい。弱った者には力を与え、勢いのない者には強さを増し加えられる。 年若い者も弱り、かつ疲れ、壮年の者も疲れはてて倒れる。しかし主を待ち望む者は新たなる力を得、わ しのように翼をはって、のぼることができる。走っても疲れることなく、歩いても弱ることはない」。 この最後の御言葉は特に有名なものです。「わしのように翼をはって、のぼることができる」とは単なる 言葉の比喩ではなく、キリストが私たちに与えて下さる新しい生命を現わしています。それはイザヤによ れば、なによりもキリストがご自身の生命を献げて贖い、建てて下さった主の教会に、私たちが連なるこ とによる生命です。教会はキリストの受難と復活の身体です。ですから教会生活のない信仰、教会を大切 にしない信仰生活は、身体を失った生活と同じように、観念の遊戯とならざるをえません。今のローマ教 皇の3代前の教皇にヨハネ・パウロ�祇い箸い�人がいます。教皇に即位してわずか40数日で天に召され た人です。私はこの教皇が語った言葉で忘れられないものがあります。いわゆる「解放の神学」と呼ばれ る運動に対して、ヨハネ・パウロ�祇い蓮峪笋篭飢颪魄Δ気覆た棲悗砲浪燭龍縮�もない」と語ったのです。 同じように宗教改革者カルヴァンは「主の教会を建てぬ神学は真の神学にあらず」と語りました。またカ ール・バルトは「教会に仕え教会を建てぬ神学はありえない」と語っています。私たちもまた、主がご自 分の全てを献げてお建てになった救いの器である教会に、ただ恵みによって連なる者とされ、仕える者と されているのではないでしょうか。そしてそこでこそ私たちは、私たちのため、そして全世界のためにな された、キリストの全ての御業を信じ告白し、キリストに連なる者とされているのです。それは言い換え ると、この私の、そして世界の救いのためのキリストの現臨を（サクラメントを）信ずる者とされている ことです。主か私たちと共におられる、そして全ての人を主は永遠の祝福のもとに招いておられる。この 揺るぎなき恵みの確かさを、いま私たちは人生の永遠の基盤として与えられているのです。 パウロはそこで、今朝の御言葉の6章16節にこのように語っています。「この法則に従って進む人々の 上に、平和とあわれみとがあるように。また、神のイスラエルの上にあるように」。預言者イザヤもエレミ ヤも同じ言葉を用いています。この「神のイスラエル」とは私たちの教会（主に贖われた群れ）のことで す。そして「この法則」これはまことに意義ぶかいパウロの言葉ですが、これはローマ書7章の「罪の法 則」と対極にある言葉です。すなわちパウロはローマ書7章において、キリストを知らなかった頃の自分 の、人間の功績に立つ（肉において見えを飾る）生活のことを「罪の法則」の支配の下にあった生活と語 っています。そしてパウロはローマ書7章24節に「わたしは、なんというみじめな人間なのだろう。だ れが、この死のからだから、わたしを救ってくれるだろうか」と問うたすぐ後で25節に「わたしたちの 主イエス・キリストによって、神は感謝すべきかな」と、ただ十字架のキリストによって自分は救われた こと。罪を贖われ、キリストの義に覆われ、今から後はキリストの僕として、神の栄光を現す生活をする 者とならせて戴いた、大きな感謝と喜びを言い表しているのです。 ですから今朝の16節に「この法則に従って進む人々の上に、平和とあわれみとがあるように」とパウ ロが語っていることは、私どもいま教会によって堅くキリストに結ばれている者たちの喜びであり幸いな のです。「法則」と言うのは、私たちの状態や資格に全くかかわらず「この救いは不変の恵みである」「確 かな約束である」という意味です。それを私たちはいま教会によって、ご受難のキリスト、そして復活の キリストに堅く結ばれることによって豊かに戴いているのです。言い換えるなら、私たちは今ここに「キ リストの恵みの法則」「キリストの祝福の法則」のもとに生きる者とされている。どんなことがあってもそ の「法則」は変わることはないのです。 だからこそ、私たちの日々の生活が、この現臨の主の前に新しいものとされてゆくのです。あらゆる人 間関係において、日々「おはよう」と挨拶を交わす家族に対してさえも、私たちは主に結ばれた者として 新しく遣わされている幸いに生きる者とされているのです。パウロは「この法則に従って進む人々の上に」 と語りました。この「進む」という字は「キリストと共に歩む」というギリシヤ語です。本当の新しさ、 私たちが人生の全体を祝福として主の御手から受け継ぐ本当の新しさは、ただキリストが共にいましたも う恵みの確かさにあります。しかも主は単なる同伴者（パートナー）ではなく、永遠に変わることのない 贖い主として、私たちの真実の「主」（リアル・マスター）として、私たちと共にいて下さるのです。それ ゆえ私たちはいつも告白する者とされています。「主はわが牧者なり。われ乏しきことあらじ。主はわれを 緑の牧場に伏させ、憩いの水際に伴いたもう」（詩篇23篇）と！。教会は、まさに主なる神がこの世界を 限りなく愛され、既にそこに救いの約束を定めて下さったことの確かな「徴」です。キリストの身体以上 に確かな救いの「徴」がどこにあるでしょうか。そこに変わらぬ私たちの生活の基盤があります。それが あるからこそ、私たちはもはや「肉において見栄を飾る」必要などないのです。キリストが私たちのただ 中にいまし、私たちを永遠にご自身のものとしていて下さるからです。私たちをご自身の「義」によって 覆っていて下さるからです。「平和とあわれみ」はそのキリストの贖いの恵みの確かさです。主が共におら れるところ、そこにこそ限りない慰めと平和、そして全ての人を活かす「あわれみ」があるのです。